2013年8月25日日曜日

香川県庁舎 ガイドツアー

丹下健三設計 香川県庁舎 のガイドツアーに参加した。


完成後55年経過ということで、今日改めて聞いたら、東京タワーができた昭和33(西暦1958)年6月の1ヶ月前の、5月に完成ということで、驚いた。

三丁目の夕日の映画は見ていないのだが、これから成長が始まるのどかな古き良き日本、ということだったと思うので、その時代に、モダンで今でも色褪せない香川県庁の構造物が存在したとは!

生憎の大雨であったが、昨日、香川県立ミュージアムの丹下健三展で感動した身としては、感動が冷めないうちにと、定員20名のうち残席1席のところに滑り込んだ。もう一つ、コンクリート構造物を調査する際には、雨の日または雨上がり直後がよい(漏水などが見えるので)、という、原則を適用しただけである。

特に土日は館内に冷房はきいていないので、夏場は蒸し風呂になるという情報を得ていたので、明日なら絶対に涼しいはず、という目論見もあった。

またまた、前置きが長くなったが、心意気は感じていただけたと思う。




上記写真は、県庁の全景(当時の、高層棟)。今は、遠くから全景を望める場所は少なく、特に今日は雨だったので周囲をウロウロしなかったので、これが、一応全体を映した唯一の写真となる。左奥に見える白い高層タワーは、新館で、これも丹下健三グループが設計したという。

さて、8階建ての鉄筋コンクリート建築は、当時西日本最大という。写真では、9階建てに見えるのにはからくりがある。(初出時、階数を1階分少なめに間違っていました。修正します。8/27)


1階ピロティ(低層棟のピロティ)から見た、高層棟の正面玄関。
これだけ広い空間が、圧迫感もなく存在するのが、今の建築に慣れた身としては当たり前かと思っていたが、「三丁目の夕日」の時代である。

5年ほど前に丹下健三によって設計された、広島の平和記念資料館と同じ、ピロティ構造を採用している。天井がとても高い。(8/27注:初出時、感想が広島ピースセンターそっくり、だけとは、言葉足らずと反省。そっくりかどうかも、私のイメージだけなので、適切でなかった。)


梁、柱接合部。

掲載写真にはないが、前面に位置する柱は、縦と横の長さが異なっている。正面から見て、柱の幅を小さく見せることも工夫している。
高層棟の1階ロビー。広い空間で、誰でも自由に入ることができる、開かれた空間である。猪熊弦一郎による作品がセンターコアの周囲4面にある。

日本庭園。これは、新棟を立てる際に一度撤去して復元したものであるが、基本設計は変わらないという。

室内と外を仕切る壁(窓)は、下部10cmが、ガラス張りで、床が繋がっている。内と外をシームレスにつなぐ効果がある。

屋上。ここもモダンな色遣いとデザイン。

手すりも全てコンクリート。

 屋上から見た庭園。
残念ながら、一部鉄筋も腐食しています。これは手すりなので、かぶりは小さいので仕方がないか。

 屋上にあるタワー。
屋上から見た新棟。
 南を見ると、室山があり、このふもとに栗林公園が位置する。
 屋上に4等三角点があった。

下から見ると9階建てに見えるのは、屋上に立っている回廊。このように雨除けにもなるが、少ない予算で、スリムに見える効果があるという。(階数を修正。8/27)

 和風の建築を思い起こさせる、小梁が外に出ている。
このように。小梁が外へ。薄い部分の幅は11cmと、通常なら考えられない。

小梁は、室内まで連続している。室内の梁はペイントされているが、これはいつからだろうか。

ビルはセンターコアの構造で、さらに周囲の12本の柱とで構造を支えている。そして、その12本の柱の、外側ではなく、内側のラインが、居住空間になっており、壁やガラスがその位置に存在する。室内の敷地は狭くなるけれども、室内の壁のラインが一直線になるので、部屋の使い勝手が良いように考えられているという。なるほど。


色遣いもこだわっています。換気装置ですが、これは黄色。
 別の階は赤。
調度品もこだわっています。詳細は省きますが。

県庁ホール。これは、55年前の完成時から、ほとんどの調度品が変わっていないので、デザイン、色遣いは当時のままだそうです。桂離宮の中身を知らないけど、それをイメージしているそうです。
ロビーの椅子も、斬新。
 ロビーは、このように広々した空間。
これも。


ということで、駆け足で紹介した。

現代建築からいうと、こんなの結構見たことある、と一瞬思ってしまうけれども、実はその先駆けであって、(専門的なことを知らないので間違いがあるかもしれないが)世界がこの香川県庁についてきた、という斬新なものだった思う。

55年を経て、古い建物は通常は、機能的に使いづらくなってきて使えなくなることが多いが、香川県庁舎は、使いづらさはほとんどないという。しかし、耐震的不安要素があり、耐震補強して残すべきかどうかの議論を始めているそうだ。意匠を残したまま、耐震を満たすようにするには、基礎ですべて持ち上げて、免震となるのだろうか。今度は、費用負担の問題が出てくるのは必至である。

今後も注目したい。



私としては、コンクリートの品質を調査したい。開発した表面吸水試験等で。

55年前、ホッパーを使って、棒で突き固めた、との記述があった。これは、水セメント比は異なるが、第一大戸川橋梁クラス(知らない方のために、60年ぐらい前に作られた、今でも現役のコンクリート鉄道橋。品質がピカイチ)になるのではないか。


別の記述
 昨日の丹下健三展に参加レポ
 香川県庁舎紹介のビデオ、等の資料情報
も参照いただければと思います。

ビデオを見た昨日は、そのビデオも秀逸なので、ツアーに行かなくても疑似体験にはなるかと思いましたが、スケール感はやっぱりビデオではわらなかった。実際に、室内の部屋のフロアに入らせていただいて、フロアの大きさがよくわかった。ツアーに参加する人も、事前にビデオを見た上で、ツアーに参加する、というのが予習となって良いと思う。

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