2013年9月30日月曜日

家具固定に思う

(だいぶ前に書いて、いま清書した記事)

地震防災の際に、家具の固定は非常に重要である、ということは最近よく言われている。私もそう思う。いまだに必要性を理解していない人への教育は一つの大きな問題であるが、ここでは、必要性を理解している人への制約について考える。

個人であれば持ち家の場合に、オフィスであれば自社ビルに限らず賃貸でも通常の場合は耐震固定をする必要があるので、構成員が必要性を理解していれば、耐震固定は可能である(でもてきていないのが現状だが、そのことはここでは議論しない)。



家具の固定をする際にネックになるのが、賃貸住宅において、釘やアンカーを打てないこと。正確には、打つのを遠慮すること。

職場であれば、賃貸オフィスであっても、私の認識では、アンカーが打てる。そもそも退去を考えてオフィスが賃貸ということではないことと、結局は引っ越しや退去後のリフォームは業者が行うため、あまり問題にならないからだと思う(要検証)。引っ越し料金は、通常、個別の部署には請求されないというのも理由にあろう。オフィスで問題になるのは、オフィス内で、部屋を貸し借りした場合である。貸し借りというと、耐震工事等で一時的に、他の部署の部屋を借りるケースである。国立大学や高専なら、経験された方も多いであろうし、今もキャンパス内のどこかの建物は概して耐震補強中である。そもそも一時避難の際は、専用の家具もなく、段ボールを積んでいたりで、普段より耐震性能は低い。そして、組織内で貸し借りをしているため、アンカーが打ちにくい。原状復帰の際に、費用が生じるためである。

何事も手段で考えるのはよくなくて、必要なのはビジョンである。会社だけでなく、借家の大家さんであっても、自分の建物を使う人に地震の被害に遭ってほしくはないと考えるだろう(要検証)。これは、ビジョンと言えるだろう。そして、利用する側も、賃貸でも自分が住む家であれば、地震で死なないために耐震をしたいと考えているはずである。

なので、賃貸だから傷つけられない、という手段から入るのではなく、ビジョン達成のために、その望みをかなえてあげるような仕組みになっているのが、よいと思う。


その背景には、そもそも、賃貸ではどこまで壁にくぎを打ってよいのか、壁紙は誰の負担で変えるべきかというのがはっきりしていないことも、理由の一つにあるのではないか。経年劣化とは、通常の使用をしていて汚れた場合、と簡単には定義できるだろう。日本に住む限り、家具固定をすることは常識であり、その作業に生じた最低限の穴は、日本版経年劣化と考える時期にきているのではないか。



実際の所、軽微な穴であれば、壁紙をとっかえなくても樹脂で埋めてそのままにすることが多い。その辺は、知っている人だけでなく、そういう手法を使って積極的に壁に穴をあけられるようにならないものか。ただし、意味のない、重い棚を固定するのに強度のあまりない石膏ボードにアンカーを打っても、石膏ボードごと吹っ飛んでおしゃかになるので、その辺の技術的なバックアップも必要だろう。

前職の国立大学では、私は全学の安全衛生担当であったので、この声を拾って、部局長レベルにおいて、一時利用の場合も正当な耐震固定のためのアンカーを打てるように対処するように検討が進められたと記憶している。これは具体的な問題を解決する手法として、画期的な提案だったと思う。が、その結果、指針ができる前に当該工事が終わってしまい、うやむやになってしまったのは残念であった。その後も問題は別のところで続いているとは思うが、結局数ヶ月で解消されるので、だれも本気で取り組もうとしない、という側面もあろう。

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