2017年6月11日日曜日

高専という職業

ある目的でこのブログを読んでいる人に届けたい文章。

高専で働くということ。

教育者であり、研究者である。

どちらも職務であり、大事である。後はどういう比重・バランスで行うかは、それぞれの学校のポリシーもあるし、それぞれの教員のポリシーでもある。他にもあるが。

私は、国立大学の助手(助教制度になる直前)と、高専の准教授の両方を経験してきた。私自身について、高専を知らない大学教員、大学生・大学院生の立場としては、高専とは大学の格下だと思っていた。これは過去の話で、当時そう思っていたのだから仕方がない。それは、高専生や高専教員と直接触れあう機会が全くなかったから。大学において学部3年の実験補助をしていたが、高専編入学生は、既に同様の単位を取得していたので授業を受けていなかったためである。同期には、高専編入者はいなかった。その当時はまだ制度化されていなかったのだろうか。

助手の途中で、尊敬する素晴らしい高専教員に複数出会い、高専の道を選んだ。


高専については、各高専でだいぶやり方が違うので、高専が全て同じかと言われるとなんとも言えない。違うと思う。単位制を導入している大学寄りの高専もいくつかある。

以下は、香川高専高松キャンパスに関してであるが、参考になろう。

1)授業が多いという懸念について
 国立大学に比べると授業は多い。定期試験も4回きちんとするので、ガチガチにコントロールされている気はする。数の上で言うと、私立大学も授業数は多いと聞く。直接比較したことはないが、私立大学で以前聞いたことのある授業数と比較すると、特段厳しいとは思っていない。

 うちの学校は、いわゆる大学のような単位制ではなく、学年制(もちろん単位で算定する)なので、同じ授業を、クラスの全員が受ける(落とした単位だけ取れば良いのではない)。

 何が言いたいのかというと、その学年の授業間であれば、教員同士で、授業変更(トレード)が比較的簡単にできるのである。出張したいときには、お互いに授業時間を交換してやりくりをして、行きたい人はバンバン出張に行っている。
 私はこれまでの4年ちょっとの期間を平均取ると、ざっと年間30日ぐらいは出張していると思う(1泊を2日と数え、日帰りも1日と数えて)。

 委員会等で、大学教員と予定を調整しようとすると、大学の先生は○○曜日は講義のため絶対に×、などという制約がある。私も、学生実験のように動かしづらいことは若干はあるが、基本は授業変更で対応できる。実験日についても、複数教員と技術職員と一緒にやっているので、よっぽどのことでないと私が抜けても成り立つ。

 これが肝心であろうが、予算さえ確保できれば、出張は可能であると思う。

2)予算が少ない
 国立大学の同年代の先生と話をしたが、均等配分の学校の予算は、どこも減らされており、高専だから少ないというのは感じなかった。
 均等配分される予算だけでは、東京出張はすぐに飛ぶ。後は外部資金を稼いだり、学校内の校長裁量経費に応募したり、である。
 これは、国立大学であれば似た状況ではないであろうか。

3)学生が忙しいことと研究者としての扱いが異なる
 これは、大学と比べるとデメリットであると思っている。本科5年で研究室に入るが、5年生は前期も後期もだいぶ授業を持っている。よって、フィールドワーク系の卒研を実施したくても、泊りで計測に、ということがなかなか難しい。専攻科生であれば、若干しやすくなるが、専攻科1年生は忙しい。

 それは、大学院生でも似たような状況であろうか。大学院1年は講義が多くて、2年は基本的に単位は1年で取っているので研究に専念できる。
 大学4年生の卒論と、高専本科5年生の卒論では、学生の自由度が異なるのは、研究を進めるという点に限っては、ハンディに感じる。

4)授業以外の校務が多いという懸念
 大学の話を聞いていると、やる内容は異なっても、会議や雑務が多いように感じる。○○ビジョン会議、とか・・・。数の上で、明らかに大きく違うとは思わない。
 クラス担任、教務主事補、寮務主事補、学生主事補、という役割が有り、それに当たると当たらないに比べて、色々な業務があり、重いのは確かである。突発的なことについては何より優先するので、出張がキャンセルされることも無くはないが、通常は、普段の事前マネジメントで対処可能と思う。

5)部活動の指導がある
 その通りである。土日が費やされるが、分担して実施しており、それなりにマネジメントしていると思っている。
 ただしここは、ブログの読者でもある妻は反論があろう。

6)地方で働くこと
 前職で横浜にいて、なかなか神奈川県の大学にいるという認識は少なかった。助手という立場が、そういう公的な役職を経験していなかっただけかもしれないので、なんとも言えない。県あたりの教員数は、首都圏は圧倒的に大きい。
 それに比べて地方に行くと、県内のその分野の教員数は少ない。これは巡り合わせもあると思うが、私は香川県において、コンクリート分野において、生コン関係、構造物の老朽化関係のどちらの審議会のようなものに入っており、人脈であったり、色々な最新の知見を得ることができている。首都圏にいたら、この分野は○○大学、これは○○大学、という風になっているようで、なかなか全部を把握するのは難しいのではないか。
 ということで、土木工学という分野であれば、地方というのはメリットでもあろうかと思う。
 香川県コンクリート診断士会の立ち上げ・運営に関わることもできたのも、貴重な経験である。

7)センター試験監督はない
 センター試験はないので、監督もない。やったことのある先生なら、その重みはわかるでしょう。センター試験監督で精神をすり減らすことはない。経験者として。高専の先生に限れば、1月中旬の体調はすこぶる良い(笑)。


以上、非常に主観的であるが、主として高専と大学の違いについて述べてみた。

 以下、香川高専の位置づけについて。
1)県庁所在地に位置する高専である。
 県庁所在の市にある、高専は少ない。交通の便はわるくない。空港、JRターミナル駅までは至近とはいわないが、車を使うが、高松空港まで30分、高松駅まで15分である。

 そして、東京出張に限定すると、岡山駅乗換えで、マリンライナー高松行きのJR新幹線の終電は、東京駅で 20:30である。これは、他の地方大学と比較しても、遅くまで東京で活動できることを表す。例えば広島大学と比較してみていただきたい。日帰りであっても、飲み会の途中まで参加できるのは、強みである。

 地方は、みんな飛行機かというと、そうでもない。香川、特に高松は、JRと飛行機が、それぞれメリットデメリットに応じて選べるのである。私の出張は、JRと飛行機は半々である。同じ四国内でも、愛媛、高知、徳島は、残念ながら、飛行機しか選択肢はない。
 さらに、高松は、JRの寝台列車に乗ると、東京駅の終電は22時である。これは、サンライズ瀬戸といって、車内も個室で木目調でミサワホームが監修しただけあって綺麗。新幹線代+ホテル代と同程度である。時間を節約できる。懇親会も1次会は完全に最後まで行ける。

 ということで、香川高専建設環境工学科は、色々な面で研究者・教育者としての環境は良いと思っている。

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