2018年5月3日木曜日

図形的な理解 -オームの法則を図化する-

物事の本質をとらえることが大事であるが、なかなか難しい。数学や物理の難しい(言い換えると、普段接することのない抽象的な)概念も、図形として、簡単なモデルとして、とらえることができると、理解につながる。逆を言うと、本質が理解できていないと図形や簡単なモデルでは表現できない。

このブログで継続的に紹介している通り、私が構造力学の概念を物理的な手作りのモデルで表そうとしているのも、その活動のひとつである。

さて、2014年から2~3年程度、土木工学系の学生に対して「電気工学概論」の授業を受け持ったことがある。電気工事士の資格は持っており、集中的に勉強しなおしたが、それを除くと学生以来である。

電気回路は、どんなものに喩えられるだろうかと考えると、一般には、管を流れる水の流れなどと表現されて、管の面積が小さいと抵抗が大きく・・・、と表現されているようである。わかりやすい。

さらに、電圧とは何か、という話は、位置エネルギーと表現されて、水をポンプアップして高い所に上げて、滝のように落とす、という喩えでわかりやすい。滝のように流れ落ちる際に、電球やモーターの仕事をするのである。

そして、ともに、流れる水の流量が、電流の大きさなのである、と。

では、「抵抗」は管の面積(や周囲の粗度でもよい)というのも理解しやすいが、それらの「電圧」「電流」「抵抗」の3つの関係を表すオームの法則は、どうやって表現できるのだろうか、というところが疑問になった。言い換えると、2次元、または3次元のグラフで表現できないだろうか、という命題が思いついた。

断片的理解から、統合的理解への転換である。

電流、電圧、をそれぞれ軸に取った場合、抵抗は、電圧÷電流なので傾きに相当する概念だろう、というところから、2次元で表現できるのではないかと思ったのである。しかし、ネット検索で探しても、そのことまでを言及したり、実際に2次元で表現したものを、見つけることはできなかった。ということで、2014年より、自分で図を作ってみて、授業でも配布したり紹介したりした。

結構良い概念だと思っているので、ブログに紹介することとする。新たに書き直したので結構な時間を費やしたが、きちんと世の中に発信したい一心で。

表記法1について説明する。縦軸を電圧に取ったのは、水の位置エネルギーが頭にあるからである。傾きが先にありきであるが、傾きを表すのはsin、cos、tanがよいので、仮にcosとすると、流れる電流の大きさが斜辺の長さに相当するのですっきりすると思ったのである。

抵抗=傾きであるが、ここでは、cosθとなるため、若干わかりにくい。角度が小さい方が抵抗が大きく、角度が大きい方が抵抗が小さくなるので、逆の概念というのがデメリットである。その解釈さえ受け入れれば、無理なく図として収まっている。

直列、並列ともに、問題ない。ただし、電流と電圧の大きさの縮尺が同じ場合には、cosθが正しく抵抗を表しているが、物理的に、電流の長さが電圧の長さよりも小さい図が書くことができないので、その場合には、縮尺を変えて下図のように表記せざるを得ない。その場合には、角度と対応していない。角度にこだわらず、コサイン=斜辺÷もう1辺 と思えば、問題ない。


表記法2は、抵抗=傾きを感覚的に重視したものである。縦軸が電圧なのはそのままとすると、横軸方向が電流となる。抵抗(図でいうライトやプロペラ)部分の横軸方向の長さが、電流となる。この部分が、若干理解しづらいが、それを受け入れれば、統一的な図が書ける。抵抗の大きさと傾きの大きさが、大小関係も一致して対応しているのが、わかりやすい。さらに、表記法1では電流と電圧の大きさの縮尺が変わるケースもあったが、表記法2においては電流の大きさが電圧(の数値)よりも非常に小さくても図が描けるので、グラフの見栄え(扁平)さえこだわらなければ、正確な図が書けて、tanθで表すことができる。グラフの見栄えを調整した場合には、縦横の縮尺が変わるが、表記法1のように、タンジェント=縦÷横 と考えれば、まったく問題がない。


ということで、素人が知ったかぶりして書いた図であるが、色々なご指摘を受けてさらにブラッシュアップしていきたいと思っている。

私がネットで検索しても、このような図化するものは一切見つけることができなかったが、先人がいれば、それもご指摘いただきたい。タイヤの再発明をして鼻高々になりたくないのである。

※訂正履歴:2022/10/31 本来、直列と並列と書くべき所を誤って、直流と交流と書いていたことに長期間気づいていなかった。本文はすぐに修正し、図は読み替えていただくことでご容赦願いたい。

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